マンション管理講座
適正化推進法に基づいたマンション管理

マンション管理は、「マンションの管理の適正化の推進に関する法律」(以下「適正化推進法」という)により、相当な部分で国土交通省の指導により管理運営を行うことになっています。このことは管理業者のみならず管理組合も大いに知っておかなければならないことです。
「適正化」という以上、如何にこれまでが適正でなかったかが推測されます。この法律をとおして、これまで適正でなかったところがあぶりだされ、さらに今後発生が予測される問題の解決法が見えてくることと思います。

適正化推進法に盛り込まれた管理体系

先ず適正化推進法が要求している管理の体系をみていきます。

(主 体)マンション管理組合

区分所有者は、「全員で、建物並びにその敷地及び附属施設の管理を行なうための団体を構成」します(区分所有法第3条)。
 *区分所有関係に入ることによって当然に管理組合の一員となる(全員で共同管理しなければならない)。

(サポート) マンション管理士

(財)マンション管理センター(適正化推進法第36条指定登録機関)に登録し、「管理組合の運営その他マンションの管理」サポートに関し、管理組合の管理者又はマンションの区分所有者等の相談に応じ、助言、指導その他の援助を行うことを業務とする」。

(サポート) マンション管理業者

国土交通省の登録を受けたマンション管理業者が委任を受けて行う。
管理業務主任者は人的要件(30棟まで1名必要)

以上のようにマンション管理の主体はあくまで、全員で構成されたマンション管理組合であることを肝に銘じなければならない。また管理組合は適正化指針の定めるところに留意して適正に管理するよう努めなければならない。さらにマンションの区分所有者は管理組合の一員としての役割を適切に果たすよう努めなければならない(適正化法第4条)
未だに、管理業者任せあるいは一部管理者による独断運営がみられますが、管理業者はあくまでサポートであること、運営は全員が参画することが「適正化推進法」の大原則であることを再認識したいものです。

マンション適正化指針

「マンションの管理の適正化の推進に関する法律」は、適正化の推進にあたっては国土交通大臣が「適正化のための指針」を定めることとしました。 これによってマンション管理は、ある一定の国策によって管理レベルを維持させようとしています。

適正化指針(要約)

  1. 基本方針

    マンションを社会的資産と位置づけ、「1 資産価値の保全」「2 快適な居住環境の確保」のためにマンションの管理を行わなければならない。

  2. 基本事項
    1. マンション管理の主体は、区分所有者等で構成される管理組合
    2. 区分所有者の組合運営への積極参加
    3. 問題にあたっては、マンション管理士等の専門的知識を有する者の支援を得ながら管理組合が主体性を持って対処
    4. 国、地方公共団体、マンション適正化推進センターは必要な情報提供および支援を行う
  3. 管理組合が留意すべき事項
    1. 管理組合の運営は、情報の開示、運営の透明化等、開かれた民主的なものとしなければならない。
    2. 「マンション標準管理規約」を参考として適切な「マンション管理規約を作成し、必要に応じて改正を行うこと。さらにトラブルを未然に回避するために「使用細則」を作成する。
    3. 共用部分の範囲と管理費用を明確にして、適正な利用と公平な負担が確保されるようにする。
    4. 経済的基盤を確立するために管理費および修繕積立金を徴収し、適正な経理とその透明性を確保するようにする。
    5. 長期修繕計画の策定およびその資金計画を立てるようにする。
  4. 区分所有者が留意すべき事項
    1. マンションを購入しようとする者は、管理の重要性を認識し、管理規約、使用細則等の管理に関する事項に留意する必要がある。
    2. 定められた管理規約、集会で決議された事項の遵守。
    3. 占有者(賃借人)は建物の使用方法につき、区分所有者と同様の義務を負う。
  5. 管理委託に関する事項
    1. 管理の主体が管理組合であることを認識した上で、委託内容を十分検討したのち書面で管理委託契約を締結する。
    2. 管理委託先の選定にあたっては、業者の情報を公開するとともに、管理業者の説明会を開くなどして、適正な業者選択につとめる。
  6. マンション管理士制度の普及と活用
  7. 国、地方公共団体およびマンション管理適正化推進センターの支援

以上が国土交通大臣による「マンション管理適正化指針」の要約ですが、若干の補足をすれば、現在「適正化推進法」(第91条~94条)による「推進センター」の指定団体として(財)マンション管理センター(H.13.8.10指定)があります。 自主管理の場合には支援を受けることが適切ですが、管理をマンション管理業者に委任する場合は、マンション管理業者の専門的知識に依るのが一般的です。

適正化推進法施行の背景

これまで適正化推進法が予定する管理の枠組みと、これに基づき国土交通大臣が定める「適正化指針」を掲げてきましたが、これらが法制化されるに至った背景をみてみましょう。何故なら、この背景を理解することによって、この法律が目指しているところがあぶりだされてくるからです。

「マンション」の定義

法令上にはじめて「マンション」という用語が使われました。 これは、「マンション」という言葉が通常一般的に使用されているのをうけて使われたようです。日本では、アパートよりも高級感(鉄筋コンクリート造等)のある建物を想定して使われてきたようです。もっとも英語の辞書を引くと、アパート(Apartment)は「区画された共同住宅」ですが、マンション(Mansion)は「大邸宅」とでています。さらに米国では高級分譲マンションは「コンドミニアム」と呼んでいるようです。当然立法時に国会でも議論されましたが、どういうわけか国際的には通用しない「マンション」になってしまいました。

第二条(定義)
一 マンション 次に掲げるものをいう。
   イ 二以上の区分所有者(中略)が存する建物で人の住居の用に供する専有部分(中略)のあるもの
     並びにその敷地及び附属施設
   ロ 略 (団地内のマンション)

2つ以上の区分された居住用の建物があればすべて「マンション」ということになり、管理組合が発生することになります。木造でも区分所有が2以上あればマンションということになります。

以上の定義からしたら「区分所有集合住宅」とでも呼ぶほうがが正しい呼称ではなかったかと思います。ちなみにアパートは「区分賃貸集合住宅」でしょうか。

マンションストック

マンション戸数は、2005年1月統計で全国で525万戸となり、首都圏では4年連続4万5千戸増加という現状です。まもなくマンション600万戸時代といっても過言ではありません。 しかし昭和56年以前と以降とでは耐震基準が大きく異なります。また小規模マンション(29戸以下)とそれ以外のマンションでは管理の質が異なっているものも多く見られます。さらに最新のマンションとの質の格差もいわれています。
これらが混在してストックを形成していることから、管理費問題・耐震問題・リフォーム・建替・組合組織等の深刻な問題が発生もしています。

「適正ではなかった」マンション管理

この法律のタイトルをよく見てください。「マンション管理の適正化の推進に関する法律」で適正化の推進となっています。これは、ストックの問題以外に、管理がこれまでが適正ではなかったことを物語っています。
どのように適正ではなかったかを検証していく中で、それをこの法律がどのように解決したか或いは何が未だに問題として残されているかを見ていくことによって、マンション管理の本質に迫ることができると思います。次回からはこの切り口で適正化推進法を見ながら、ストックの問題とともに、あるべきマンション管理を考えていくことにしましょう。

マンション管理標準指針 総会の運営

前回のマンション適正化指針に基づき、国土交通省はマンション管理の標準指針としてのガイドラインを発表しました(H.17.12.15)。
内容は、マンション管理に関する基本事項を網羅し、それぞれについて管理組合が取り組むべき「標準的な対応」を具体的に提示し、一部の項目については「望ましい対応」を示し、更なるレベルアップを促進しようとしています。

国土交通省 マンション管理標準指針(平成17年12月策定)

http://www.mlit.go.jp/common/001080787.pdf

はじめに総会の運営について、みてみたいと思います。

  1. 総会の開催数

    少なくとも毎年1回

  2. 通常総会の開催時期

    新会計年度開始後2ヶ月以内

  3. 通常総会の招集通知

    開催日より少なくとも2週間前までに、日時、場所、議題及び議案の要領を明記した招集通知の発信

  4. 通常総会の開催予告

    招集通知の送付に先立ち、開催日時、場所を予告

  5. 総会前の情報提供

    重要案件については、事前説明会やアンケートにより、事前に意見聴取をおこなう

  6. 総会の出席率

    書面や代理人によるものを含め、少なくとも80%程度の区分所有者の議決権行使

  7. 総会決定事項の広報

    議事録を作成し、区分所有者又は利害関係人の求めに応じて閲覧できる状態で保管され、保管場所を
    管理事務所等に掲示している

大変勉強になりますので、これらの指針を区分所有法との関連で比較してみましょう。区分所有法以上に考慮されている部分に注意して下さい。

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